そうだ、ライブハウスへ行こう

私立恵比寿中学 × ディアフーフ @渋谷O-East

10月 16, 2012


文:菊地佑樹

「DOMMUNEをご覧の皆さん、現場も楽しいですよ〜!」

私立恵比寿中学の“あいあい”こと、廣田あいか がそんなMCをしたとき、一方、僕の横で、DOMMUNEを仕切る宇川直宏氏は、モニターをパソコンで見つめながら大きく頷き、会場に向かって「最高だね!」と呟いていた。

10月13日、【渋谷O-Eest】で行われたこの日のイヴェントは、DOMMUNEで生配信され、現場だけではなく、自宅ないしは、ネットが使える場所から、スマートフォンなどを介して見ることができた。

DOMMUNEは、テン年代の新しい、シーンに対するカウンターツールとして、どこまでも先鋭的だが、すべての輪郭をデジタルに置き換えることは不可能だということも映し出しているような気がする。

当日の現場の雰囲気には、実際に、イヴェントでしか感じ得ない熱量と、多幸感や、自由度があった。

私立恵比寿中学は、“学芸会”と称した、独自性の豊かなパフォーマンスや、可愛らしいMCがとても華やかだったが、ディアフーフの紹介をしてみせたり、共演者の気遣いを忘れない姿勢もとても素晴らしかった。

私立恵比寿中学が終わると、先ほどまで、会場を照らしていた多くのサイリウムは影を潜めたが、お客さんのほとんどはその場に残り、次のアーティスト、ディアフーフを待った。会場は、依然、満員である。

ディアフーフが登場するまでのあいだ、転換 DJの、“ DJ ☆☆☆ ”が60年代のサイケデリック・チューンを次々とかけるが、よく見ると“ DJ ☆☆☆ ”は、田名網敬一氏を模して作った人形だった。

こうしたすべてのカオスを締めくくるバンドは、やはりカオスだった。

ディアフーフの演奏は常にアグレッシヴで、しかしポップだった。ヴォーカルを担当するサトミは、ステージを縦横無尽に飛びまわりながら移動。ツイン・ギターはダイナミックなリフを刻むが、ドラムが一向にペースをつかませてくれない。この破天荒とも言えるパフォーマンスが、会場に先ほどとは違ったムードを創っていく。

アイドルを経由してたどり着いたこの場所が、一体どこにあるかさえも分からないほどまでに彼らの演奏は僕の脳髄を刺激し続けたが(堪らなくなった僕は、関係者エリアから下のフロアに移動)、途中、たどたどしい日本語のMCをする、ドラマーのグレッグに、宇川直宏氏が「グレッグ!終わったら飯食いに行こうぜ!」などと横槍を入れるなど、出演者を含め、当日の会場には、多くの笑顔があった。

アンコールを含むディアフーフの演奏がすべて終わると、大きな歓声が会場を包んだ。

常識を覆す異色対バンは、音楽的な視野を広げる作業さえも面倒なまでに、ただ単純に素晴らしく、ただ楽しい体験だった。

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