11月 4, 2012
文:菊地佑樹
“何かとんでもないこと”が起きていた。それはもしかしたら、僕や君にとっての革命と言えるものだったのかもしれない。そう言ってしまいたくなるほど、あの場所で起こった出来事に、シーンの隔世や、自分の価値観がめまぐるしく展開されるのを感じたし、先鋭的な、5つのアーティストが繰り出した、叫びにも似た音たちは、僕に“日本のインディー・シーンは間違いなく面白い”とあらためて気づかせてくれたと同時に、“この瞬間にここにいられて幸せだ”と素直に思わせてくれた。
「3年後自慢出来るバンド」をキャッチ・コピーに掲げ、10月28日に〈高円寺クラブライナー〉で行われた『サンレイン・レコーズ meets DUM-DUM』は、京都を中心に活動している、シンガー・ソング・ライターのゆーきゃんが運営を務めるレーべル、サンレイン・レコーズと、DUM-DUM がタッグを組んだイヴェントだった。僕もDJという形でイヴェントに参加させていただいたわけだが、当日は雨にも関わらず、若い世代を中心に、多くのリスナーが〈高円寺クラブライナー〉に集まった。
白波多カミン、うみのて、トリプルファイヤー、ミツメ、転校生。5つのアーティストはどれも本当に素晴らしかったが、時間が少し経ったいま、あのときのことを振り返ってみると、僕はどうしてもトリプルファイヤーを思い出さずにはいられない。
トリプルファイヤーは、言うならば、アンディー・ウォーホルのポップ・アートだった。それは、心を打つわけでもなく、染み渡るわけでもなく、揺さぶるわけでもなく、スタンプのように、“ただ表面に貼り付いたのである”。彼らは「高田馬場のジョイ・ディヴィジョン」なんて呼ばれていたり、DUM-DUMスタッフがこぞって賞賛の声をあげていたので、当日をとても楽しみにしていたが、緻密に構築された、ポスト・パンク・リヴァイヴァルの影響を色濃く感じさせるサウンドは、マスロックてきなをアプローチを感じさせつつも、自由で個性的なリリックや、ヴォーカル吉田の奇妙なパフォーマンスは、まるで亡霊に取り憑かれたイアン・カーティスみたいだった。なるほど。トリプルファイヤー。僕は日本でこんなバンド、他に知らない。なんだあれ。とにかく、今後の活躍に期待である。
全てのアーティストの演奏が終わったあと、出演者、スタッフを集め、イヴェントを仕切っていたゆーきゃんが一言、「本当に3年後、大きな会場で、このメンバーで出来るように、頑張りましょう!」。界隈や、ジャンルは違うのかもしれない、でも僕らはいまのシーンに生きる戦友であるんだなと、あらためてしみじみと思ってしまったが、本当にそうなることを僕も望んでいます。それはあのとき会場にいたリスナーもきっと同じ気持ちを抱いていると思う。
ではまた3年後。